平均残業時間について、働く環境や業界ごとの実態は大きく異なります。長時間労働が避けられない業界もあれば、効率化や働き方改革の進展により残業が減少している分野もあります。残業時間の多さは、職場の生産性や従業員の健康に深く影響するだけでなく、ワークライフバランスにも関わる重要な要素です。そのため、転職活動においては、興味のある業界や企業の残業時間や労働環境を理解し、自分の働き方に合った選択をすることが大切です。このページでは、平均残業時間にまつわる実態や業界ごとの傾向を紹介し、職場選びの際に役立つ情報をお伝えします。
職種別平均残業時間(20代~50代)
20代 | 30代 | 40代 | 50代 | |
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営業 | 23.3 | 24.5 | 25.8 | 24.0 |
企画/管理 | 21.6 | 20.5 | 26.4 | 24.0 |
事務/アシスタント | 11.1 | 12.7 | 15.3 | 15.1 |
IT/通信系エンジニア | 15.9 | 22.1 | 23.6 | 23.2 |
モノづくり系エンジニア | 21.4 | 25.1 | 24.0 | 25.9 |
建築/土木系エンジニア | 18.5 | 30.0 | 26.9 | 28.5 |
素材/化学/食品系エンジニア | 18.9 | 17.1 | 20.5 | 19.4 |
医療系専門職 | 15.2 | 18.6 | 17.4 | 18.5 |
販売/サービス | 16.8 | 21.1 | 23.5 | 22.5 |
クリエイティブ | 21.2 | 30.9 | 23.5 | 26.9 |
IT・情報通信業界
IT・情報通信業界は、特にシステムエンジニアやプログラマーといった技術職の労働時間が長くなりがちな業界です。この業界では、企業やクライアントが求めるプロジェクトの納期が厳しく設定されていることが多く、その納期に間に合わせるために残業が発生します。プロジェクトのスケジュールが後ろ倒しになればなるほど残業時間が増加し、時には連日深夜まで作業が続くケースも少なくありません。また、ITエンジニアは需要が高い反面、慢性的な人材不足により、一人あたりの業務負担が増加していることも長時間労働の一因です。
IT業界のもう一つの特徴は、働く時間や場所の柔軟性があるためリモートワークが進んでいる点です。しかし、リモートで働けることから「常に接続している」状態になりがちで、仕事とプライベートの境界が曖昧になるリスクもあります。クライアントとの打ち合わせが頻繁に行われたり、緊急の障害対応が発生したりすることもあるため、リモートワークであっても労働時間が短縮されるとは限りません。このように、IT・情報通信業界では、業務の性質や顧客対応のプレッシャーが残業時間を増やす要因になっているのです。
金融業界
金融業界は、銀行や証券会社、保険業などが含まれますが、特に証券会社や銀行の営業職で長時間労働が顕著です。この業界では、顧客対応や営業成績が重要視されるため、顧客のスケジュールに合わせた対応やアポイントメントの調整が必要になります。特に富裕層の顧客や企業取引先に対しては、夜間や休日でも対応が求められることが多く、営業時間外にも顧客の要望に応えなければならない状況が発生しやすいです。また、営業成績が評価に大きく関わるため、競争が激しくなり、結果として自発的に残業が増加することもあります。
さらに、金融業界では定期的に繁忙期が訪れます。特に決算期や期末など、業務量が集中する時期には、多くのスタッフが時間外にまで及ぶ業務をこなさなければなりません。銀行や証券会社では、こうした繁忙期の残業が業界全体の労働時間を押し上げている要因となっています。また、支店勤務のスタッフの場合、店舗の開閉業務があるため、他の部署に比べて勤務時間が長くなる傾向も見られます。
建設業
建設業は、現場の進捗状況によって残業時間が大きく左右される業界です。建設プロジェクトでは、工期が遅れると予算やスケジュールに大きな影響を与えるため、プロジェクトの遅れを取り戻すために追加の作業や残業が発生することが多くあります。特に現場管理や施工管理を担当するスタッフは、納期に間に合わせるために長時間労働を余儀なくされることがしばしばあります。
また、建設業には遠方の現場で働く場合も多く、現場への移動時間が拘束時間に加算されることもあり、実質的な労働時間はさらに長くなる傾向があります。例えば、大規模な公共事業やインフラのプロジェクトでは、現場が都市部から離れた場所に位置することも多いため、朝早くから現場に入り、夜遅くまで作業を続ける日々が続くことも少なくありません。さらに、建設業界では慢性的な人手不足が課題であり、現場で働くスタッフの負担が一層重くなることも、残業時間が多くなる要因の一つです。
医療・介護業界
医療・介護業界は、患者や利用者への対応が求められるため、予定外の残業が発生しやすい業界です。特に救急医療を扱う病院や緊急対応が必要な施設では、勤務シフトが不規則になることが多く、突然の患者対応や夜勤明けの延長勤務などが日常的に行われています。また、医師や看護師、介護士などの職種は専門性が高く、業界全体で人材不足が深刻化していることも影響して、少人数で多くの患者や利用者を支えなければならない状況が続いています。
介護施設でも、利用者の急な容体変化や家族からの要望などで、通常のシフト外に勤務が必要になることがしばしば発生します。医療や介護業界では、労働時間が長くなりがちな環境が常態化しており、慢性的な残業が発生しやすい傾向があります。このような状況は、精神的・身体的な負担が大きく、長期的には労働者の健康にも影響を及ぼすため、業界全体として労働環境の改善が求められています。
教育業界
教育業界では、学校や教育機関の教員が残業時間が長くなりやすい職種です。教員は授業の準備や生徒の採点、部活動の指導など、業務範囲が広範囲に及びます。特に部活動の顧問になると、放課後や週末の活動も担当しなければならず、授業外の時間が長くなる傾向があります。また、保護者対応も多く、特に問題が発生した際には、夜間に緊急で対応しなければならないことも少なくありません。
さらに、教員は学期ごとの繁忙期や試験期間、進路指導のシーズンに残業が増加するため、特定の時期には労働時間が大幅に延びることが一般的です。また、教育業界では特に生徒や保護者への対応が重要視されるため、教員の裁量で業務時間を調整することが難しく、結果として残業が常態化しています。教育業界全体で働き方改革が求められていますが、現場の業務量や人員不足もあり、残業時間の削減が進まない状況が続いています。
残業の多い業種の特徴
残業の多い業種には、それぞれ独自の特徴があります。ここでは、各業種の残業が多くなる要因や背景について、より詳細に説明します。
プロジェクトベースの業務
IT業界と建設業界の特性
IT業界や建設業界は、プロジェクト単位で業務が進められるため、納期やスケジュールに厳格な管理が求められます。これにより、特にプロジェクトの後半段階では、納期を守るために残業が不可避になることが多くなります。たとえば、ITプロジェクトでは、開発の最終段階においてバグ修正や機能追加が発生し、クライアントの要求に迅速に応えるためにエンジニアが長時間働くことが一般的です。納期が迫るにつれて、労働時間が延びる傾向があり、時には夜遅くまで作業が続くこともあります。
工事現場での管理業務
建設業界でも同様のことが言えます。工事現場では、天候や資材の納期など、さまざまな外的要因が工事の進行に影響を与えるため、これを考慮しながら工程を調整する必要があります。現場の進捗が遅れると、他の工程にも影響を及ぼし、全体の納期がずれることになります。これを回避するために、建設業の管理者や施工者は残業を強いられることが多く、特に大型プロジェクトの場合、長時間労働が日常化しています。また、職人のスケジュール調整や安全管理も求められるため、夜間作業や週末作業が発生することもあります。
顧客対応の重視
金融業界の顧客要求
金融業界では、顧客との関係構築が非常に重要であり、営業職やリレーションシップマネージャーは、顧客のニーズに応えるために柔軟な対応が求められます。特に、証券会社や投資銀行では、顧客の投資戦略や市場の動向に合わせて迅速な意思決定が必要となります。これにより、顧客からの問い合わせや要望に対して、通常の営業時間を超えて応じることが求められることが多く、結果として残業が発生します。
顧客サービスの拡張
さらに、顧客との面談や会議が頻繁に行われるため、顧客の都合に合わせてスケジュールを調整する必要があります。このため、営業職にとっては、勤務時間外に会議を行うことや、週末に顧客と接触することが常態化しています。特に金融商品やサービスの販売を担当する営業職は、成果が給与に直結するため、顧客の期待に応えるために自発的に残業をする傾向があります。このような環境では、プレッシャーがかかり、長時間労働が生じることが多くなります。
繁忙期の影響
医療・介護業界の特殊性
医療や介護業界は、特定の時期に業務が集中することが多く、繁忙期には残業が急増します。例えば、医療機関では、インフルエンザや風邪が流行する冬季に患者が増加するため、医師や看護師は通常以上の勤務を強いられます。また、手術や治療が集中する時期にも、残業が増加し、急な患者の対応に追われることになります。特に、急患が発生した際には、勤務が延長されることが一般的です。
教育業界の業務集中
教育業界でも、年度末や試験期間、進路指導の時期など、特定のシーズンに業務量が急激に増えるため、教員やスタッフは多忙になります。特に、試験前の成績処理や進路指導では、通常の授業に加えて多くの業務が発生するため、残業が不可避となります。また、部活動の顧問を務める教員の場合、放課後や週末に活動が行われるため、業務時間が延長されることもあります。このような環境では、教員の労働時間が長くなりやすく、精神的なストレスも高まります。
人手不足
建設業界の慢性的な人手不足
建設業界は、慢性的な人手不足が続いており、特に職人や技能者が不足しています。このため、現場では限られた人数で多くの業務をこなさなければならず、一人あたりの業務負担が増加します。例えば、大型プロジェクトでは、職人一人が担当する作業量が増え、結果として長時間の勤務が続くことが一般的です。これにより、残業が常態化し、労働環境が厳しくなる傾向があります。
医療・介護業界の人材不足
同様に、医療や介護業界でも人手不足が深刻化しています。特に介護士や看護師が不足しているため、限られた人材で多くの患者や利用者に対応しなければなりません。この状況では、一人あたりの業務量が増加し、業務が終わらないまま次のシフトが始まることが多く、結果として残業が常態化します。特に夜勤がある場合、日中の業務が未処理のまま夜勤に入ることがあり、長時間労働が余儀なくされます。
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文化や慣習
長時間労働が美徳とされる文化
日本の企業文化において、長時間労働が美徳とされる傾向があるため、特に製造業や伝統的な企業では残業が一般的に受け入れられています。この文化は、労働者が会社に対して忠誠心を示す一つの方法として位置づけられ、結果として残業が常態化してしまいます。また、同僚や上司との関係を重視する風潮があるため、「早く帰ることが悪い」という認識が広がっている場合もあります。このような環境では、労働時間が延びることが当然視されてしまい、働く側も気軽に帰りづらい状況が生まれます。
業界特有の慣習
さらに、業種によっては特有の慣習が存在し、それが残業の多さに寄与しています。たとえば、製造業では生産ラインの調整やトラブル対応などが求められ、定時後に残業することが当たり前の文化が根付いていることがあります。このような業種では、残業が労働者の評価に影響を与えることもあり、残業を避けることが難しい状況が続きます。
高い業務負担
技術職や専門職の特殊性
IT業界や金融業界などの技術職や専門職では、業務の高度なスキルや専門知識が求められ、その結果として業務負担が大きくなることがあります。特に、ITエンジニアや金融アナリストなどは、業務内容が専門的であり、成果が求められるため、納期やクオリティに対するプレッシャーが高いです。このような状況では、特に集中した作業が必要であり、通常の勤務時間内に業務を終えることが難しくなります。結果として、残業が発生しやすくなります。
ストレスによる労働時間の延長
また、高い業務負担はストレスの原因となり、働く人々のメンタルヘルスにも影響を及ぼすことがあります。業務に追われることで、思考が煩雑になり、集中力が低下するため、作業の効率が悪くなります。この悪循
環が続くと、残業時間が増え、さらにストレスが溜まるという状況になります。特に、締切に迫られる状況では、精神的なプレッシャーが大きくなり、夜遅くまで働くことが常態化することもあります。
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まとめ
残業の多い業種には、それぞれの業務特性や業界の文化が深く影響しています。プロジェクトベースの業務や顧客対応の重視、繁忙期の影響、慢性的な人手不足、長時間労働が美徳とされる文化、そして業務負担の大きさなどが、残業を生む要因として挙げられます。
これらの特徴を理解し、自分自身の働き方を見直すことが重要です。特に転職を考えている場合は、残業の多さや業務負担の程度をしっかりと把握し、自分に合った環境で働くことが求められます。また、企業側も労働環境の改善に向けた取り組みを進めることが重要であり、長時間労働の解消は、労働者のメンタルヘルスや生産性向上にも繋がります。各業種の特性を理解し、より良い働き方を模索することが、今後の労働環境改善の鍵となるでしょう。
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